—“節税できる物件”ほど危ない理由—
海外不動産の相談を受けていると、一定の確率で出てくるフレーズがあります。それが「節税に向いている物件です」という言葉です。特に法人で利益が出ている方ほど、この言葉には強く反応します。税金を減らしたいという気持ちは当然ですし、それ自体は間違いではありません。ただし、実務の現場で見てきた経験から言えるのは、「節税に向いている」と強く打ち出されている物件ほど、実は注意が必要なケースが多いということです。
節税という言葉は非常に分かりやすく、数字としても見えやすいため、どうしても判断の中心になりやすい。しかし、本来の不動産投資は、税金ではなく資産価値で判断するべきものです。税金は毎年変わりますが、物件は何年も、場合によっては何十年も保有する資産です。この時間軸の違いを理解していないと、短期的には良く見えても、長期的には大きな歪みが出てきます。
ここでは、実際に多く見てきた「避けるべき特徴」を、かなりリアルな視点で解説していきます。これを理解しておくだけで、かなりの確率で大きな失敗を回避できます。
築年数が極端に古く、「減価償却だけ」が魅力になっている物件
最も典型的で、そして最も多いのがこのパターンです。築年数が極端に古く、建物割合が非常に高い物件。例えば築60年、70年、あるいはそれ以上の建物で、しかも建物比率が80%や90%といった条件が並んでいると、「これは節税効果が大きい」と感じやすくなります。
確かに数字上は魅力的に見えます。減価償却の額は大きくなり、法人利益との相殺効果も出やすい。しかし、このタイプの物件には、必ずと言っていいほど別の問題が潜んでいます。それが「維持コスト」と「競争力の低下」です。
築年数が古いということは、単純に老朽化しているということです。外から見て問題がなさそうでも、内部では配管や電気設備、外壁、防水、屋根など、見えない部分が劣化していることが多い。こうした部分は、ある日突然問題として表面化します。そして、その修繕費用は決して安くありません。
ニューヨークの築70年のレジデンスで、購入から数年後に外壁の補修と配管交換が必要になり、想定外の費用が一気に出ていったケースを見たことがあります。減価償却で税金は減っていましたが、それ以上に現金が出ていったため、オーナーの心理的な満足度は決して高くありませんでした。
さらに重要なのが「市場での競争力」です。築年数が古いということは、周辺に新しい物件が建てば、選ばれにくくなるということを意味します。入居者は常に比較しています。同じ賃料であれば、新しい物件を選ぶのは当然です。その結果、賃料を下げざるを得ない状況が生まれます。節税のために購入したはずの物件が、収益の足を引っ張る存在になることもあります。
減価償却の数字だけを見て、「これは良い」と判断するのは非常に危険です。むしろ、「なぜこの物件が残っているのか」という視点を持つべきです。本当に優良な物件は、減価償却の数字だけで売られることは少ないからです。
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