- ~恒大集団の破綻から5年。世界最大級の不動産市場で、いま何が起きているのか~
- 中国にとって不動産は、単なる住宅産業ではなかった
- 崩壊の引き金となった「三道紅線」
- 2026年になっても数字はかなり厳しい
- ただし、「中国全土が同じように崩壊している」わけではない
- 中国不動産最大の問題は「住宅が余っていること」
- 人口減少という、不動産市場にとって最も厳しい現実
- 不動産価格下落が中国人の消費まで止めている
- 地方政府も不動産バブルの被害者
- 中国政府は何もしていないわけではない
- 恒大が倒れても問題が終わらなかった理由
- 中国は「日本のバブル崩壊」と同じ道を歩むのか
- では、現在の中国不動産は「買い」なのか
- それでも一線都市の一等地は別物
- むしろ今後は「不動産で経済を成長させない中国」になる
- 中国の不動産市場は「崩壊」ではなく「リセット」
- 中国不動産から海外投資家が学ぶべき最大の教訓
- 結論:中国不動産市場は崩壊したのか?
~恒大集団の破綻から5年。世界最大級の不動産市場で、いま何が起きているのか~
「中国の不動産市場はもう崩壊したのでしょうか?」
海外不動産や中国経済についてお話ししていると、ここ数年かなり頻繁に聞かれる質問です。恒大集団、碧桂園、万科といった巨大デベロッパーの経営問題、工事が止まった未完成住宅、住宅価格の下落、いわゆる「鬼城」と呼ばれる空室だらけのニュータウン。こうしたニュースだけを見ていると、中国の不動産市場そのものが完全に壊れてしまったように感じる方も多いと思います。
2026年8月には、経営破綻した中国恒大集団の創業者・許家印氏に対し、中国の裁判所が資金調達詐欺や資金流用、贈収賄などを含む罪で終身刑を言い渡したと報じられました。恒大はかつて販売額ベースで中国最大級のデベロッパーとなり、負債総額は3,000億ドルを超える規模に膨らみました。その崩壊は、中国不動産バブルの象徴として世界中に衝撃を与えました。
では、中国不動産は本当に終わったのでしょうか。
私の結論から申し上げれば、中国の不動産市場は「完全崩壊」したわけではありません。しかし、1990年代後半から約20年以上続いてきた不動産を中心とする成長モデルは、ほぼ完全に終わったと考えた方が良いと思います。
そして現在起きているのは、一時的な景気後退というより、中国経済そのものの構造転換です。
中国にとって不動産は、単なる住宅産業ではなかった
中国の不動産問題を理解するには、まず「中国にとって不動産が何だったのか」を理解する必要があります。
日本では不動産市場が悪化しても、経済全体が即座に止まるわけではありません。しかし中国では、不動産開発、住宅販売、建設、鉄鋼、セメント、家電、家具、銀行融資、地方政府財政まで、不動産を中心に巨大な経済圏が形成されていました。
特に重要なのが地方政府です。中国では土地そのものは国家または農村集団が所有する仕組みで、地方政府は土地使用権をデベロッパーへ売却することによって多額の収入を得てきました。つまり、不動産価格が上昇し、デベロッパーが次々と土地を取得することで、地方政府にもお金が入る仕組みだったのです。
デベロッパーは土地を取得し、マンションを建設する前からプレセールスで住宅を販売します。購入者から受け取ったお金を次の土地取得や別プロジェクトの工事資金へ回し、さらに新しい住宅を販売する。
住宅価格が上昇し続け、販売戸数が増え続ける限り、このモデルは非常に強力でした。
しかし、どこかで住宅販売が止まればどうなるでしょうか。
次の工事に回す資金がなくなります。
土地を買えなくなります。
地方政府の収入が減ります。
銀行融資の不良債権リスクが高まります。
そして消費者は「今買うと値下がりするのではないか」と考え、さらに住宅を買わなくなります。
まさに今の中国では、この負の循環が続いています。
崩壊の引き金となった「三道紅線」
中国不動産バブルの転換点としてよく挙げられるのが、2020年に中国政府が導入した「三道紅線」と呼ばれるデベロッパー向け債務規制です。
中国政府も、不動産会社の借金が膨らみすぎていることを理解していました。
そこで、不動産会社の負債比率や現金保有などについて基準を設け、過度な借入を制限しました。
政策自体の目的は理解できます。
しかし、問題は中国の不動産業界そのものが、大量の借金とプレセールスによって成長する構造になっていたことです。
資金調達を突然絞られた結果、恒大を筆頭に、多くのデベロッパーの資金繰りが急速に悪化しました。
住宅販売で入ってきた資金を次の物件開発へ回し続けていたため、一度資金の流れが止まると大量の工事がストップします。
結果として、「住宅ローンを払っているのに自宅が完成しない」という非常に深刻な問題が発生しました。
これは通常の不動産価格下落よりはるかに深刻です。
不動産市場に対する消費者の「信用」が壊れてしまったからです。
2026年になっても数字はかなり厳しい
「もう数年前の話なので、中国不動産も回復しているのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし2026年の公式統計を見ても、依然として厳しい数字が並んでいます。
中国国家統計局によれば、2026年1~6月の全国不動産開発投資額は前年同期比18.0%減少しました。住宅投資も17.8%減少しています。
新規着工面積は23.4%減少、住宅に限れば24.1%減少。竣工面積も23.7%減少しています。
さらに新築商品住宅を含む販売面積は前年同期比11.6%減少し、販売額も13.6%減少しました。住宅販売額だけでも13.7%減少しています。
これは「少し調整している」という数字ではありません。
不動産開発、着工、販売の全てが二桁減少している状態です。
さらに2026年7月の新築住宅価格は70都市平均で前月比0.1%下落、前年同月比では3.2%下落しました。70都市のうち前月比で価格が上昇したのは17都市だけです。
つまり2026年になっても、中国住宅市場は明確な回復局面には入っていません。
ただし、「中国全土が同じように崩壊している」わけではない
ここは非常に重要です。
中国不動産を語る時、「中国」という巨大な市場を一つにまとめて考えてはいけません。
北京。
上海。
深圳。
広州。
杭州。
成都。
重慶。
そして人口減少が進む地方都市。
これらは全く別の不動産市場です。
2026年現在も、中国の一線都市や経済力のある主要都市には住宅需要があります。実際、価格下落が続く中でも、一部の主要都市では一定の回復や取引増加が見られます。
一方、人口流出が進む三線都市、四線都市と呼ばれる地方都市では、かなり深刻な住宅余剰があります。
つまり現在の中国不動産は、「全面崩壊」というより、
強い都市と弱い都市が急速に二極化している市場
と考えた方が正確です。
上海の一等地と、人口が減少している地方都市の郊外マンションを同じ「中国不動産」として評価すること自体に無理があります。
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