~「海外不動産は持ち続ければ上がる」という前提を、一度疑ってみる~
最近、海外不動産に関する相談の中で、明らかに増えているものがあります。
それが、「数年前に買った東南アジア不動産を売却したい」という相談です。
特に多いのが、フィリピン、タイ、カンボジアです。
5年前、7年前、10年前に購入した方もいれば、コロナ前に新築プレビルドを契約した方もいます。購入理由も様々ですが、「東南アジアはこれから成長する」「人口が増える」「不動産価格も上がる」「日本より高い利回りが取れる」といった説明を受けて購入された方が多い印象です。
ところが現在、
「そろそろ売りたいが、どうすれば良いか分からない」
「買った会社に相談したが、売却は対応してもらえない」
「思ったより家賃が取れていない」
「中古で売ろうとしても買い手が付かない」
「プレビルドを買ったが工事がほとんど進んでいない」
といった相談を受けることが増えています。
ここで最初に申し上げたいのは、フィリピン、タイ、カンボジアの不動産を全て今すぐ売った方が良い、という話ではありません。
良い物件もあります。
立地が良く、現地実需があり、賃貸が安定し、今後も価格上昇が期待できる物件であれば、持ち続ける合理性はあります。
しかし、数年前に購入したまま、「東南アジアは成長するから」という理由だけで保有を続けている方は、一度現在の市場価格、賃料、需給、為替、出口を見直した方が良いと思っています。
不動産は「買った時に良い投資だったか」ではなく、今この瞬間、同じ価格の現金を持っていたとして、その物件をもう一度買いたいと思うかで考えるべきです。
答えがNOであれば、売却を検討する意味があります。
- なぜ最近、東南アジア不動産の売却相談が増えているのか
- まずフィリピン。マニラのコンドミニアムは供給過多が無視できない
- 新築デベロッパーと中古オーナーでは戦い方が違う
- フィリピン不動産は「損切り」も選択肢
- タイは少し事情が違う
- タイについては、為替益を確定させる考え方もある
- タイで私なら売却を検討するケース
- カンボジアで最も怖いのは「価格下落」ではなく「完成しないこと」
- カンボジア市場自体が全て崩壊しているわけではない
- プレビルドを持っている人は「待つ」だけでは駄目
- 「購入した会社が売却してくれる」と思ってはいけない
- 東南アジア不動産を10年前に買った方は、一度査定を取るべき
- 含み益も含み損も、売却しなければ確定しない
- 売却判断は「購入価格」ではなく「将来期待リターン」
- 私が東南アジア不動産で現在最も警戒する物件
- 東南アジア不動産はもう駄目なのか?
- 私なら今どうするか
- 「買う力」より「売る力」の方が重要
- 結論
なぜ最近、東南アジア不動産の売却相談が増えているのか
理由は国ごとにかなり違います。
タイで多いのは、為替です。
日本円は長期間にわたり弱い状態が続いており、外貨建て資産を持っている日本人にとっては、円換算すると大きな含み益が出ているケースがあります。
物件価格自体はそれほど上昇していなくても、購入した当時よりバーツ高・円安になっていれば、日本円換算では利益が出ます。
そこで、「せっかく為替益が出ているうちに売りたい」という相談が出てきます。
フィリピンで多いのは、マニラのコンドミニアム供給過多への不安です。
そしてカンボジアでは、「購入したプレビルド案件の工事が予定通り進まない」という、もっと根本的な相談があります。
同じ「売りたい」という相談でも、理由が全く違うわけです。
ですから私は、東南アジア不動産を一括りにして評価するのではなく、国ごと、都市ごと、物件ごとに出口を考えます。
まずフィリピン。マニラのコンドミニアムは供給過多が無視できない
フィリピン不動産について、私は以前から一部エリアのコンドミニアム供給量を懸念していました。
2026年現在、その問題はかなり明確な数字として表れています。
Leechiu Property Consultantsのデータによると、2026年第2四半期のメトロマニラにおける販売中のコンドミニアム在庫は8万2,900戸まで増加し、同社が統計を取り始めて以降の最高水準となりました。現在の販売ペースでは在庫消化に約34ヶ月かかるとされています。さらにColliersは、2026年末のメトロマニラ住宅空室率が25.6%まで上昇すると予測しています。
これはかなり重い数字です。
もちろん、マニラ全体が駄目という話ではありません。
BGCのように企業、外国人駐在員、高所得者などの賃貸需要があるエリアは、他の地域より底堅い動きをしています。実際、2026年上期のデータでも、BGCでは賃料がわずかながら上昇しています。
しかし、湾岸エリアなどでは賃料がコロナ前を大幅に下回る地域もあります。Leechiuのデータでは、Bay Area/Pasayの平均賃料はコロナ前との比較で大きく下落しています。
ここで投資家が考えるべきなのは、「フィリピン経済が成長するか」ではありません。
「自分が持っているコンドミニアムと競合する部屋が何戸あるのか」です。
同じタワーに売却物件が50戸ある。
周辺に新築マンションが次々完成する。
デベロッパーが新築在庫を割引販売する。
こうなると、中古所有者は非常に厳しい競争になります。
新築デベロッパーと中古オーナーでは戦い方が違う
海外不動産でよく起こる問題があります。
自分は5年前に2,000万円で購入した。
今、同じエリアでデベロッパーが2,500万円で新築を販売している。
だから自分の物件も2,500万円くらいで売れるはずだ。
これは必ずしも正しくありません。
新築デベロッパーには広告があります。
モデルルームがあります。
分割払いがあります。
購入キャンペーンがあります。
仲介会社への高いコミッションもあります。
一方、中古所有者にはそれがありません。
中古を買う人からすると、「新築が2,500万円なら、中古はもっと安く買いたい」となります。
これが、外国人向け新築価格と実際の中古流通価格が乖離する理由です。
フィリピン不動産を持っている方には、デベロッパーの現在販売価格ではなく、実際に中古で成約している価格を調べてほしいと思います。
フィリピン不動産は「損切り」も選択肢
購入価格より安くしか売れない場合、「損を確定したくない」という心理が働きます。
これは非常によく分かります。
しかし投資では、購入価格は過去の数字です。
例えば2,000万円で購入した不動産が現在1,500万円でしか売れないとします。
「2,000万円に戻るまで待とう」と考える人は多いでしょう。
しかし、その1,500万円を売却して別の不動産へ投資すれば5年間で2,000万円になる可能性があるなら、どちらが合理的でしょうか。
重要なのは、「いくらで買ったか」ではなく、現在の1,500万円をどこに置くのが最も効率的かです。
これが投資家としての考え方です。
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