—10億・1億・5000万円、それぞれの「想定外」—
海外不動産の相談を受けていると、ある共通点に気づきます。それは、「節税」という言葉が前に出過ぎている案件ほど、後から問題が起きやすいということです。もちろん節税は重要です。しかし、それが目的になった瞬間に、投資の本質が見えなくなる。
その典型的な3つのケースを、ここでは実際にあった流れに近い形で紹介します。
数字や条件は、実務上よくあるレベルのものに合わせていますが、内容はかなりリアルです。むしろ、「これは起き得る話だな」と感じてもらえると思います。
※あくまでも事例です。当該エリアや物件が悪いわけではなく、偶発的な要素も大きいので、一概には言えません。
ケース①
10億円・ニューヨーク1棟レジデンス
建物比率90%/煉瓦造/築70年
「完璧な節税案件」のはずだった
最初に相談を受けたのは、都内で複数事業を展開している法人オーナーでした。毎年安定して利益が出ており、税額もかなり大きい。「税金がもったいない」という言葉が、最初の打ち合わせで何度も出てきました。
その時に持ち込まれたのが、ニューヨークの1棟レジデンスでした。
価格は約10億円。築70年の煉瓦造、建物比率は約90%。この数字を見た瞬間、「これは減価償却がかなり効くな」と誰もが思う条件でした。実際、紹介してきた業者も「ほぼ理想的な節税案件です」と強く押していました。
試算をすると、年間の減価償却はかなり大きく、法人利益との相殺効果も十分に見込める内容でした。税務上の数字だけを見ると、確かに理想的に見えましたね。
オーナーもかなり前向きで、「これなら早めに進めたい」と、話は一気に進みました。
しかし、ここで一つ見落とされていた点がありました。それは、「建物の状態」です。築70年という数字は、減価償却の観点では魅力的でも、運用という観点では全く別の意味を持ちます。
取得から約1年後、問題は一気に表面化しました。
最初に出てきたのは配管トラブルでした。古い煉瓦造の建物では珍しい話ではありませんが、調査を進めると、部分修繕では済まないレベルの老朽化が見つかりました。結果として、大規模な修繕が必要になり、その費用は想定を大きく上回りました。
さらに追い打ちをかけたのが、賃貸の空室率でした。ニューヨークは市場が成熟している分、競争も激しい。周辺には新しい物件も多く、古い建物は選ばれにくくなっていました。
当初想定していた賃料が維持できず、収益は徐々に下がっていきました。
オーナーはこう言いました。「節税はできた。でも、思っていた投資じゃなかった」。この言葉が、すべてを表していました。
減価償却は確かに機能しました。しかし、それ以上に修繕費と収益低下が重なり、キャッシュフローは想定より厳しくなりました。
結果として、資産としての満足度は決して高いものではありませんでした。
節税としては成功。しかし、投資としては微妙。このケースは、まさにその典型でした。
※ニューヨーク不動産投資×法人節税自体はきちんと物件を選ぶ事で、とても合理的且つ優れた戦略です。あくまでも当該物件が想定よりも多くの修繕費が発生した事がマイナス要因です。
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