- 税引後キャッシュフロー・経費・売却まで考えると、答えは大きく変わる
- 大前提として、日本居住者は海外所得も日本で課税される
- 個人保有の最大のメリットは「シンプルさ」
- ただし、高所得者になるほど個人保有の税負担は重くなる
- 数字で比較すると分かりやすい
- 法人のお金を個人へ移す時にもう一度考える必要がある
- 法人保有は「再投資する人」と非常に相性が良い
- 経費の考え方でも法人は使いやすい
- 減価償却を目的に海外不動産を買う時代ではない
- 個人保有には「売却時」という大きなメリットがある
- だから「年間税率」だけで決めてはいけない
- もう一つ重要なのが相続
- 海外法人で買えばもっと節税できるのか?
- では、どんな人が個人向きなのか
- 逆に、法人向きなのはどんな人か
- 私ならどうするか
- 1億円投資する場合でも、答えは人によって違う
- 結論:個人か法人かではなく、「最終手取り」で決める
税引後キャッシュフロー・経費・売却まで考えると、答えは大きく変わる
海外不動産の相談を受けていると、かなり頻繁に聞かれる質問があります。
「海外不動産は個人名義と法人名義、どちらで購入した方が良いですか?」
これは非常に重要な質問です。
結論から申し上げると、私は「海外不動産だから法人」「節税したいから法人」という単純な決め方はおすすめしていません。
年収500万円の会社員が1,000万円の海外不動産を1室購入するケースと、すでに年間数千万円の所得がある経営者が5,000万円、1億円単位で海外不動産を買い増していくケースでは、最適な所有方法が全く違うからです。
さらに、不動産投資で本当に見るべきなのは、毎年の所得税や法人税だけではありません。
「税引後で毎年いくら残るのか」
「どこまで経費として認められるのか」
「減価償却をどう取るのか」
「売却時にいくら税金が発生するのか」
「売却後のお金を個人で使うのか、それとも再投資するのか」
ここまで考えて、初めて個人と法人を比較できます。
今回は、日本に居住する投資家が海外不動産を取得するケースを中心に、個人保有と法人保有の違いを、税引後キャッシュフローという実務的な観点から解説します。
大前提として、日本居住者は海外所得も日本で課税される
最初に絶対に理解しておかなければならないことがあります。
「海外の不動産だから、日本では税金がかからない」ということは基本的にありません。
日本の居住者は、原則として国内所得だけでなく国外所得についても日本で課税対象となります。海外不動産を売却して利益が発生した場合についても、国税庁は日本の居住者であれば日本で課税対象になることを明示しています。 (国税庁)
賃料についても同様で、海外で発生した賃貸収入だから日本の確定申告と無関係というわけではありません。
さらに、不動産所在地国でも所得税やキャピタルゲイン税などが発生する場合があります。
「それなら二重課税になるのでは?」と思われるかもしれませんが、日本には外国税額控除など二重課税を調整する制度があります。ただし、国や所得の種類、租税条約、現地で支払った税金の性質などによって扱いが変わります。
したがって海外不動産では、日本側だけを見ても駄目です。
日本の税金+現地国の税金=最終的な税引後リターン
として考える必要があります。
ここが国内不動産より圧倒的に複雑です。
個人保有の最大のメリットは「シンプルさ」
まず個人で海外不動産を取得するケースから考えてみます。
個人保有の最大のメリットは、何と言っても構造がシンプルなことです。
自分で物件を購入し、自分で賃料を受け取り、必要経費を差し引いて所得を計算します。
法人設立費用もありませんし、毎年の法人決算も必要ありません。法人住民税の均等割や法人用銀行口座などを別途管理する必要もありません。
そのため、例えば700万円、1,000万円、2,000万円程度の海外不動産を1室購入するだけであれば、法人を新設してまで購入することが本当に合理的なのかは考える必要があります。
年間100万円の利益を得るために法人を一社作り、税理士報酬や法人維持コストを年間数十万円支払っていたら、本末転倒だからです。
ただし、高所得者になるほど個人保有の税負担は重くなる
個人保有で注意したいのが、所得税の累進課税です。
日本の所得税率は課税所得に応じて5%から45%まで上昇します。さらに復興特別所得税があり、住民税も考慮する必要があります。 (国税庁)
したがって、本業ですでに高い所得がある人ほど、不動産所得が追加された時の税負担が重くなりやすいわけです。
例えば、会社経営や給与所得などによって、すでに高い税率帯にいる人が海外不動産から年間500万円の利益を得たとします。
その500万円がそのまま低い税率で課税されるわけではありません。
所得全体との関係で高い限界税率が適用される可能性があります。
これに対して法人の場合、国税である法人税の基本税率は23.2%で、一定の中小法人では年800万円以下の所得部分に15%等の軽減税率が適用される制度があります。もちろん実際には法人住民税・法人事業税等もあるため「法人なら15%で終わり」という話ではありません。 (国税庁)
それでも、高所得者になればなるほど、法人保有を検討する価値は高まります。
数字で比較すると分かりやすい
簡略化して考えてみましょう。
3,000万円の海外不動産を購入し、年間賃料収入が300万円、管理費、修繕、保険、固定資産税等の現地コストが80万円、減価償却等を除いた年間利益が220万円だったとします。
個人の場合、その220万円が不動産所得として他の所得と合算されます。
仮にすでに高い所得があり、追加所得に対する所得税・住民税等の限界税率が概算50%近い人であれば、220万円の利益に対して100万円前後の追加税負担が生じる可能性があります。
手元に残る金額は約110万円前後です。
一方、法人で同じ220万円の利益が出た場合、法人側の実効税率を仮に30%程度と置けば、税金は約66万円、法人内部には約154万円が残ります。
年間では約44万円の差です。
10年間続けば単純計算で440万円です。
さらに、その154万円を法人から出さず、翌年の海外不動産、株式、M&A、国内不動産などへ再投資すれば、より大きな資金を運用に回せます。
ここが法人保有の大きなメリットです。
ただし、この比較には非常に重要な落とし穴があります。
法人に154万円残っても、それはまだ「自分個人のお金」ではありません。
法人のお金を個人へ移す時にもう一度考える必要がある
法人保有をすすめる記事で、意外と抜け落ちているのがここです。
法人税を払って会社にお金を残せたとしても、その資金を経営者個人が自由に使えるわけではありません。
役員報酬として受け取れば個人側で給与所得課税や社会保険の問題が発生します。
配当として受け取れば配当に対する課税を検討する必要があります。
つまり、法人保有の本当のメリットは「税率が低い」というより、
個人に出さず、法人内部で資金を再投資できること
だと私は考えています。
海外不動産から得た利益を生活費として毎年個人へ戻したい人と、今後10年間で海外不動産を5戸、10戸と買い増したい人では、同じ法人保有でも意味が全く違います。
後者ほど法人のメリットが大きくなります。
法人保有は「再投資する人」と非常に相性が良い
例えば法人で海外不動産から年間1,000万円の税引前利益が出ているとします。
税引後で700万円程度が法人に残ったと仮定しましょう。
この700万円を個人へ移さず、そのまま翌年の物件取得の頭金として使います。
さらに新しい不動産から収益が発生し、法人内部に資金を蓄積します。
そして、その資金をさらに次の不動産へ投資します。
この循環を10年、20年と続けるのであれば、法人という「資産保有・再投資の箱」を持つ意味はかなり大きくなります。
不動産だけでなく、株式、債券、事業投資、M&Aなどへ資金を振り向けることもできます。
私は、ある程度以上の資産規模になってくると、法人を単なる節税装置としてではなく、資産運用会社として考えた方が良いと思っています。
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